桜木紫乃さんの「ラブレス」という小説を読みました。昭和40年くらいのまだ貧しい日本で、壮絶な人生を送った姉妹のお話です。主人公は貧しい家に生まれて、中卒で奉公に出され、それからそこを飛び出して温泉地を回る劇団で歌うようになりました。その後仕立て屋やドレスのレンタルをしながら一人で子供を育てて母親を引き取ります。途中で男に逃げられ、裏切られ、散々な目に遭いながらも柳のように生きていく。
この時代に比べると今の日本は格段に恵まれています。物価高だ、少子化だと言いながらも、食べられて、お風呂にも入れて、柔らかい布団で寝られます。貧困や暴力があふれ、人権が守られない時代もあったのだなぁと思うといたたまれない気持ちになります。
小説を読むとふとした時にその場面を思い出すことがあります。何の脈絡もないのに、ふっとその情景が浮かぶことがあります。ノウハウ本のように即効性はないけれど、自分の生き方や考え方に何らかの影響を与えるような気がします。今回の小説では、主人公が途中で歌への情熱を失う場面があります。私はそこに深く共感しました。業務や宅建勉で読書の時間が取れませんでしたが、試験が終わったらまたたくさん読みたいと思います。